なぜそう呼ぶ?ネコババの由来と猫の習性に迫る真相

拾った金品をこっそり自分のものにしたり、悪事を隠して素知らぬ顔をすることを指す「ネコババ」の由来は、猫が排泄した後に砂をかけて糞を隠す習性にあります。

漢字では「猫糞」と書き、隠密に行われる悪巧みと猫の可愛らしい仕草のギャップから生まれた、日本人の観察眼が光る慣用句です。

この記事では、ネコババの確実な語源や「ばば」という言葉の本来の意味、江戸時代の俗説である「猫婆説」の真相、法的な問題点、そして猫にまつわる多彩なことわざまでを網羅して詳しく解説していきます。

まずは言葉の結論と語源の核心から見ていきましょう。

項目 内容の要点
言葉の意味 拾得物や預かり物をこっそり着服すること、または悪事を隠してとぼけること
最も有力な由来 猫が糞(ババ)をした後に後ろ足で砂をかけて隠す習性から名付いた「猫糞(ねこばば)」説
言葉の「ババ」とは 古くから糞尿や大便を指す幼児語・俗語(汚いものを意味する言葉)
よくある俗説 江戸時代に借金を返さずとぼけた猫好きの老婆(猫婆)に由来するという民間語源

ネコババの由来を先に結論から解説

日常生活で「拾った小銭をネコババした」といったように、何気なく使われているこの言葉。

結論から言うと、「猫が糞(ババ)をした後に、後ろ足で砂をかけて見えなくする習性」が直接の語源です。

最も有力とされる説:漢字表記「猫糞」が示す排泄習性

国語辞典や語源辞典において、確固たる定説として記載されているのが「猫の排泄行為説」です。

ネコババは漢字で書くと「猫糞」となります。

猫は野生時代からの本能として、自らの強い体臭や排泄物の臭いによって外敵に居場所を察知されないよう、排泄後は丹念に土や砂をかけて隠す習性を持っています。

昔の人々はこの行動を綿密に観察し、「悪いこと(排泄物)をしたのに、平然と砂をかけてなかったことにし、何食わぬ顔で去っていく姿」を人間の悪事の隠蔽や着服に重ね合わせました。

悪事をこっそり隠蔽して知らんぷりを決め込む態度を「猫糞(ねこばば)を決め込む」と表現するようになったのが始まりです。

言葉の構成と意味が転じた歴史的プロセス

排泄行為から金品の着服へと意味が広がっていった流れを段階的に整理してみましょう。

  1. 原義の観察:猫が用を足した後に砂をかけて糞を隠す仕草に注目する
  2. 第一の意味の誕生:「悪事や失敗を隠して何食わぬ顔でごまかすこと」の比喩として定着する
  3. 第二の意味への拡大:落ちている金品をこっそり懐に入れて「最初からなかったこと」にする行為を指すようになる
  4. 現代の用法:現在では「悪事の隠蔽」よりも「拾った物の横領・着服」の文脈で圧倒的に多用されるようになる

ネコババの「ババ」とはどういう意味か?

「ネコ」が動物の猫であることは明白ですが、後半の「ババ」という響きに疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。

この「ババ」の正体と言葉のルーツを詳しく掘り下げてみましょう。

古語・幼児語としての「ばば(糞)」

「ばば」とは、日本において古くから使われている「大便」「糞」「汚物」を指す俗語、あるいは幼児語です。

平安時代や室町時代の文献にも汚いものを遠ざける言葉として登場し、現代でも幼い子どもに対して「ばばっちい(汚い)から触っちゃダメ」と言い聞かせる表現に残っています。

つまり「猫のババ」とは、そのまま直訳すれば「猫のウンチ」という意味そのものなのです。

トランプゲームの「ババ抜き」のババ(ジョーカー=疫病神・汚物・厄介者)も同源とされており、忌避すべき不浄なものを象徴する言葉でした。

ネコババの由来をめぐる諸説と俗説の検証

ネコババの語源には、猫の糞説のほかに、江戸時代の特定の人物に結びつけた有名な俗説が存在します。

その実態と確からしさを比較してみましょう。

説の名称 由来とされる対象 説の内容とエピソード 確からしさの評価
猫の糞説(定説) 猫の排泄習性 糞を砂で隠して素知らぬ顔をする猫の習性を比喩したとする説 極めて高い(漢字表記「猫糞」および古文献と一致)
猫好きの老婆説(俗説) 江戸・本所の老婆 猫を飼う強欲な老婆が借金を返さずにとぼけたことに由来する説 低い(後世のこじつけ・民間語源とされる)
赤ん坊の糞説(俗説) 幼児のいたずら 汚い物を隠す幼児語「ババ」全般から派生したとする説 低〜中(猫糞説の派生的な解釈にすぎない)

民間語源「猫好きの老婆(猫婆)」伝説の真相

巷で時折耳にするのが、「江戸時代の本所に住んでいた猫好きのお婆さん」に由来するという物語です。

多くの猫を可愛がっていた強欲な老婆が、近所から借りたお金や預かった品物を催促されても、「そんなものは知らない」「返したはずだ」としらを切り続けたため、近隣の人々が「猫婆(ねこばば)」と呼んで蔑んだのが始まりだという説です。

話としては非常に面白く庶民的な説話ですが、江戸の風俗資料や言語学的な研究においては、後から作られたこじつけ(民間語源)であると結論づけられています。

すでに存在していた「猫糞」という言葉の響きから、面白おかしいストーリーが後付けで創作された典型例と言えるでしょう。

ネコババは犯罪!法的な位置づけと罪名

日常会話ではどこか滑稽な響きを持つネコババですが、実際の法律上では明確な刑事犯罪に該当します。

どのような罪に問われるのか、法律の観点からも正しく理解しておきましょう。

遺失物等横領罪(刑法254条)の成立

道端や公園、電車内などで他人が落とした財布や貴重品を拾い、警察に届け出ずに自分のポケットに入れた場合、「遺失物等横領罪(占有離脱物横領罪)」が成立します。

刑法第254条により、「1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料」が科される重大な違法行為です。

「誰も見ていなかったから」「拾ったものだから自分のもの」という言い訳は通用しません。

窃盗罪(刑法235条)との境界線

他人が置き忘れた直後でまだ持ち主の支配下にあるとみなされる場合(例えばカフェのテーブルに置かれたスマートフォンを持ち去るなど)は、遺失物横領にとどまらず、より重い「窃盗罪(10年以下の懲役又は50万円以下の罰金)」に問われる可能性があります。

ちょっとした気の緩みや出来心によるネコババが、人生を大きく狂わせる結果につながることを忘れてはなりませんね。

猫の習性にまつわる日本語の慣用句

日本人は古くから猫と親密に暮らしてきたため、猫の生態や行動を観察して生まれた豊かな慣用句が数多く存在します。

ネコババと合わせて知っておきたい代表的な言葉をご紹介します。

  • 猫をかぶる:本性を隠して、おとなしそうに装うこと。猫が普段はおとなしいふりをして獲物を狙う様子に由来します。
  • 借りてきた猫:普段は活発なのに、見知らぬ場所に行くと急に小さくなっておとなしくなる様子の例えです。
  • 猫の手も借りたい:非常に忙しくて、誰でもいいから手伝ってほしい状態。実質的には役に立たない猫の手すら欲しがるほどの切迫感を表します。
  • 猫に小判:価値の分からない人に貴重なものを与えても何の役にも立たないことの例えです。
  • 猫の額(ひたい):土地や部屋の面積が極めて狭いことの比喩表現です。

ネコババと拾得物の取り扱いに関する正しいルール

日常生活で他人の落とし物や忘れ物を発見した際、どのように対応すべきか迷うこともあるでしょう。

法律に基づいた正しい拾得物の処理フローを確認し、無用なトラブルを防ぎましょう。

拾得した場所 届出先と期限 拾得者の権利
路上・公園など公共の場所 警察署または交番(拾得から7日以内) 5%〜20%の報労金(お礼)を請求する権利、3か月後に所有権を取得する権利
駅・店舗・施設内など その施設の管理者・駅員(拾得から24時間以内) 施設管理者と折半で報労金を請求する権利(各2.5%〜10%)
自宅・私有地内 土地や建物の所有者に引き渡し 所有者間の協議による

期限を過ぎてから警察へ届け出た場合、報労金を請求する権利や落とし主が現れなかった場合の所有権を喪失してしまいます。

「ネコババする意図はなかった」と主張しても、長期間自宅に保管していた場合は横領の疑いをかけられるリスクがあるため、発見したその日のうちに速やかに届けることが鉄則です。

ネコババの由来に関するよくある質問

ネコババの語源は何ですか?

猫が排泄した後に砂をかけて糞を隠す習性に由来します。悪事をこっそり隠して素知らぬ顔をすることを、この猫の行動に例えました。

ネコババを漢字で書くとどうなりますか?

漢字では「猫糞」と書きます。「ばば」は古くから大便や糞を意味する俗語・幼児語です。

猫好きの老婆(猫婆)が由来というのは本当ですか?

俗説(民間語源)であり誤りです。言葉の響きから後世に作られたフィクションであり、学術的には猫の排泄習性である「猫糞」が正式な語源です。

ネコババは法律上どんな罪になりますか?

拾った物を着服した場合は「遺失物等横領罪(刑法254条)」に問われます。状況によっては「窃盗罪(刑法235条)」が適用されることもあります。

「ババを引く」のババも同じ意味ですか?

同じ語源とされています。「ババ」は汚物や不浄なものを意味し、トランプのババ抜きで厄介者(ジョーカー)を引いて損をすることを指します。

ネコババという言葉はいつ頃から使われていますか?

江戸時代中期の文献や狂言、浄瑠璃などの大衆文化の中で「猫糞」という表現が使われていた記録が残っています。

ネコババの由来まとめ

「ネコババ」の由来は、猫が自らの糞を砂で覆い隠して平然と立ち去る習性を、悪事の隠蔽や金品の横領に例えた「猫糞」という鋭い人間観察から生まれた言葉でした。

猫好きの老婆にまつわる俗説などのストーリーが生まれるほど、日本人の生活や言葉の中に猫がいかに深く根付いていたかを物語っています。

ユーモラスな響きを持つ言葉ですが、現実の社会では信頼を失うだけでなく重大な犯罪となる行為ですので、決してネコババを決め込むことのない誠実な行動を心がけたいものですね。