電話をかける時や受ける時に誰もが無意識に使っている挨拶「もしもし」の由来は、「申し上げます、申し上げます」というへりくだった丁寧な言葉が短縮された「申し、申し(もうし、もうし)」にあります。
明治時代に電話が開通した当初、電話交換手が高級官僚や実業家などの利用者に丁寧に応対するために採用した呼びかけが語源です。
この記事では、もしもしという言葉の誕生と電話技術の歴史、ビジネスシーンで使ってはいけない明確な理由、さらには妖怪・狐を判別するという興味深い都市伝説の真相までを網羅して詳しく解説していきます。
まずは電話開通当時の日本社会の様子から振り返ってみましょう。
| 項目 | 内容の要点 |
|---|---|
| 言葉の最も有力な由来 | 謙譲語「申し上げます」が重なった「申し、申し(もうし、もうし)」が音変化して定着 |
| 定着した歴史的契機 | 明治23年(1890年)の電話開通時、通話テストや電話交換手の呼びかけ言葉として採用された |
| ビジネスでの扱い | マナー違反(NG)。略語であるため目上や顧客に対しては失礼とされる |
| 有名な俗説(都市伝説) | 「狐は『もしもし』と2回続けて言えないため化かされていないか確かめる言葉」とする民間伝承 |
もしもしの由来を先に結論から解説
スマートフォンの時代になっても、電話がつながった瞬間の第一声として定着している「もしもし」。
結論から言うと、「『申し上げます』という丁寧な呼びかけを重ねた『申し申し』が、電話の開通とともに省略されて定着した言葉」です。
最も有力とされる説:電話交換手と開通当時の通話事情
日本の電話の歴史は、明治23年(1890年)12月16日に東京と横浜の間で初めて電話サービスが開始されたことから始まります。
当時の電話は加入者が極めて限られており、通話料も非常に高額だったため、利用者の大半は政府の高級官僚や財閥の有力実業家でした。
初期の電話は相手に直接つながるのではなく、まず「電話交換局」の交換手を呼び出し、手動でコードを差し替えて相手につないでもらう仕組みでした。
当初、男性の交換手は「おいおい」「はい、何用だ」といった横柄な言葉遣いをしており、利用者の間でも「おいおい」と呼び合うのが普通でした。
しかし、明治30年(1897年)に女性の電話交換手が採用されると、より丁寧で礼儀正しい接客用語として「申し上げます、申し上げます」と言葉を掛ける規則が作られました。
これが日常的に使われる中で急速に短縮され、「申し申し」を経て「もしもし」へと変化していったのです。
「もしもし」誕生と定着のタイムライン
電話の普及と言葉の移り変わりを年代順に確認してみましょう。
- 江戸時代以前:道行く人に呼びかける際や、目上の人に声をかける際に「申し、申し(これこれ、お願いがある)」と使用されていた
- 明治23年(1890年):東京〜横浜間で電話が開通。当初は「おいおい」「はい、用事は何だ」と話していた
- 明治26年(1893年):電話の接続テストを行う際、音声が届いているか確認するために「申し申し」が多用され始める
- 明治30年代:女性交換手の登場とともに、丁寧な標準語として「申し申し」から「もしもし」への変化が進む
- 大正〜昭和初期:自動交換機の導入や一般家庭への普及に伴い、全国民共通の電話の第一声として完全に定着する
もしもしの語源と本来の意味
「もしもし」の原形である「申し(もうし)」は、動詞「申す(もうす)」の連用形です。
「言う」の謙譲語であり、「これから私が言葉を申し上げますので、どうかお聞きください」という相手に対するへりくだった姿勢を表しています。
江戸時代の歌舞伎や狂言などでも、誰かに声をかける際に「もし、旅のお方」「もしもし、旦那様」と呼び止めるセリフが頻繁に登場します。
つまり、電話のためにゼロから作られた言葉ではなく、古くから存在していた丁寧な呼びかけの言葉が、音質の悪かった初期の電話回線において「こちらの声が聞こえていますか」と確かめる符牒として最適だったため、選ばれたと言えますね。
なぜビジネス電話で「もしもし」はNGなのか?
日常会話では誰もが使う「もしもし」ですが、ビジネスマナーにおいては「ビジネス電話で『もしもし』を使ってはならない」というのが鉄則です。
なぜ失礼に当たるのか、その明確な理由と正しい言い換えを確認しておきましょう。
| 相手・場面 | NGとされる表現 | 推奨される正しい表現 | ビジネスマナー上の理由 |
|---|---|---|---|
| 社外からの着信を受ける時 | 「もしもし、〇〇会社です」 | 「お電話ありがとうございます。〇〇株式会社の△△でございます」 | 会社名を明確に名乗り、用件を聞く姿勢を示すのが基本マナー |
| こちらから社外へかける時 | 「もしもし、〇〇ですけど」 | 「いつも大変お世話になっております。〇〇社の△△でございます」 | 略語を使わず、相手への感謝の挨拶から会話を始めるべき |
| 声が途切れて聞こえない時 | 「もしもし?聞こえますか?」 | 「恐れ入ります、少々お電話が遠いようでございます」 | 電波や相手の機器を責めず、謙虚に状況を伝えるクッション言葉を使う |
略語は目上の相手に対して不作法であるという原則
最大の理由は、「もしもし」が「申し上げます」という正式な敬語を極端に省略した言葉だからです。
日本語の礼儀作法において、言葉を省略して短縮形を使うことは、相手に対する敬意を欠いた馴れ馴れしい態度と見なされます。
友人や家族同士の内輪の会話なら問題ありませんが、取引先や顧客に対して略語で呼びかけることは重大なマナー違反となるわけです。
もしもしにまつわる都市伝説:狐を見分ける言葉?
「もしもし」の由来として、近年SNSや海外の日本アニメファンの間で非常に有名になっているのが「狐(キツネ)の見分け方説」です。
日本の古い民間伝承や怪談において、「人を化かす狐や妖怪は舌の構造が人間と異なるため、『もしもし』と2回続けて発音することができず、『もし』と1回しか言えない」という言い伝えが存在します。
そのため、夜道で暗がりから声をかけられた際、相手が人間か化け狐かを見分けるために「もしもし!」と呼びかけたという面白い伝承です。
非常に魅力的で民俗学的に興味深い昔話ですが、電話の挨拶言葉としての歴史的ルーツは前述の「電話交換手の申し申し」であり、狐伝説は後から結びつけられたロマンあふれる俗説と言えるでしょう。
世界の言語における「もしもし」の呼びかけ比較
外国では電話に出る際、どのような第一声を発しているのでしょうか。文化ごとの違いを一覧表で見てみましょう。
| 言語・国 | 電話での第一声 | 言葉の本来の意味 |
|---|---|---|
| 英語圏 | Hello?(ハロー) | 元々は注意を引くための叫び声「Holla」から派生した挨拶 |
| 中国 | 喂?(ウェイ) | 「おい」「もし」と相手を呼び止める間投詞 |
| 韓国 | 여보세요?(ヨボセヨ) | 「ここを見てください(此方を見よ)」が変化した呼びかけ |
| イタリア | Pronto?(プロント) | 「準備ができています(話す用意は完了)」という意味の形容詞 |
| フランス | Allô?(アロ) | 英語のHelloがフランス語訛りで定着した言葉 |
| ドイツ | 自分の名字を名乗る | 第一声で挨拶を挟まず、即座に「シュミットです」と名乗るのが主流 |
スマートフォンの普及と電話応対の現代的変化
固定電話から携帯電話、そしてスマートフォンへと通信デバイスが劇的な進化を遂げた現代において、「もしもし」の使われ方にも大きな変化が見られます。
着信相手が画面に表示されるナンバーディスプレイが当たり前になったことで、第一声の文化がどのように移り変わっているのかを見てみましょう。
| 通話の形態 | 以前の第一声(固定電話時代) | 現代の第一声(スマホ時代) | 変化の理由 |
|---|---|---|---|
| 知人・家族からの着信 | 「もしもし、〇〇です」 | 「あ、〇〇?どうしたの?」 | 発信者番号で相手が事前に分かるため、「誰からの電話か」を確認する手順が省略された |
| 不明な番号からの着信 | 「はい、もしもし〇〇です」 | 「はい、〇〇です(名乗りのみ)」 | 迷惑電話や詐欺対策として、不用意に会話を始めず相手の用件を警戒する傾向が強まった |
| ビジネススマホ | 「もしもし」 | 「はい、〇〇(社名)の△△です」 | 直通番号であっても業務用の端末であることを明示し、即座に要件に入れるよう配慮する |
「相手が誰か分からない不安」を解消するための言葉だった「もしもし」は、通信の高度化とともに少しずつ役割を変えつつあります。
もしもしの由来に関するよくある質問
もしもしの語源は何ですか?
「申し上げます、申し上げます」という敬語が短縮された「申し、申し(もうし、もうし)」が音変化したものです。
いつから電話で使われるようになりましたか?
明治23年(1890年)の電話開通直後から接続確認などに使われ始め、明治30年代に女性電話交換手の丁寧な応対言葉として普及しました。
ビジネスで「もしもし」と言ってはいけないのはなぜですか?
「もしもし」は「申し上げます」を省略した略語であり、目上の人や取引先に対して略語を使うことは失礼で不作法にあたるためです。
狐を見分ける言葉というのは本当ですか?
日本の昔話や伝承に「狐は『もしもし』と2度続けて言えない」という俗説がありますが、電話の挨拶言葉としての実際の語源ではありません。
海外で電話を考案した人は何と言って電話に出ましたか?
電話を発明したアレクサンダー・グラハム・ベルは船乗りの掛け声「アホイ(Ahoy!)」を提案しましたが、エジソンが提唱した「ハロー(Hello)」が世界標準となりました。
電話の第一声として「もしもし」以外の日本語は何がありますか?
現代のビジネスや公式な場では「はい、〇〇です」「お電話ありがとうございます」「お世話になっております」が使われます。
もしもしの由来まとめ
「もしもし」の由来は、明治初期の電話開通という激動の近代化の中で、相手に最大限の敬意を払って言葉を届けようとした「申し、申し」という美しい日本語にありました。
音声が不鮮明だった時代に、相手とのつながりを必死に確かめ合おうとした先人たちのコミュニケーションの工夫が、この短い言葉の中に息づいています。
日常の親しい会話では温かい響きを楽しみつつ、ビジネスの場では相手を敬う正式な挨拶を使い分けることで、言葉の持つ歴史と品格を大切に受け継いでいきたいものですね。