二枚目の由来!三枚目との違いや八枚目までの役柄を徹底解説

二枚目の由来は、江戸時代の歌舞伎の芝居小屋に掲げられていた役者看板の並び順にあります。

劇場の正面に並ぶ看板のうち、右から二番目に美男子や色男役の名前が書かれていたことが語源です。

看板そのものを起源とする説と配役を記した紙の番付を重視する見解がありますが、いずれも歌舞伎の興行慣習に根ざしています。

本記事では、二枚目の詳しい成り立ちから三枚目との関係、八枚目までのすべての役柄、日常会話で役立つ雑学までわかりやすく解説します。

確認ポイント 二枚目の由来に関する要点
言葉のルーツ 江戸時代の歌舞伎劇場で掲げられた役者看板の並び順
二枚目の役割 若い色男や美男子の役柄(しっとりとした恋愛場面を担当)
諸説の状況 劇場の表看板説と紙の役割番付説があるが、歌舞伎の番付体系という単一の系統に集約
看板の総数 全部で八枚あり、一枚目は主役、三枚目は道化役、八枚目は座頭を担当
記事でわかること 語源の背景、八枚看板の全役柄、二枚目半などの派生語、江戸と上方の美意識の違い

二枚目の由来を先に結論から解説

美男子を指して二枚目と呼ぶようになった背景には、日本の伝統芸能である歌舞伎の興行システムが深く関わっています。

まずは最も有力とされる由来の核心部分と、劇場に並んでいた看板の全体像から確認していきましょう。

最も有力とされる説は歌舞伎の八枚看板

二枚目という言葉の最も有力な由来は、江戸時代の歌舞伎の芝居小屋の正面に掲げられていた八枚看板です。

当時の芝居小屋では、その劇場に出演する主だった役者の名前を大きな板に書き、劇場の正面にずらりと並べていました。

この看板は右側から順番に特定の役柄や序列が決まっており、右から数えて二番目の看板に若い美男子役の名前が掲げられていたのです。

二番目の看板に名前が載る役者は、劇中で女性を惹きつける色男や、しっとりとした恋愛シーンを演じる美男子でした。

そこから転じて、劇場に通う観客や町人たちの間で、容姿端麗な男性全般を二枚目と呼ぶ習慣が生まれました。

歌舞伎の看板における八枚の役柄早見表

芝居小屋の正面に並んでいた看板は、二枚目だけでなく全部で八枚の定位置が定められていました。

それぞれの看板に割り振られていた役柄と、その特徴を一覧表で整理しました。

看板の順序 歌舞伎における役柄 役割と人物像の特徴
一枚目 主役(正義のヒーロー・立役) 舞台全体を引っ張る看板役者であり、劇場の顔となる中心人物
二枚目 色男(美男子・若衆) 優美で容姿端麗な役柄であり、劇中の恋愛場面を華やかに彩る人物
三枚目 道化(お笑い・滑稽役) 観客を笑わせるひょうきんな役柄であり、場を和ませる役割
四枚目 中軸(まとめ役・中堅役者) 劇の進行を支える実力派であり、物語の屋台骨となる存在
五枚目 敵役(敵方のまとめ役) 悪役側の中心人物であり、主役と対立して物語に緊張感を与える存在
六枚目 実敵(純然たる悪役・情け容赦のない敵) 一切の同情の余地がない悪事を働く人物であり、強い憎まれ役
七枚目 実悪(最大の巨悪・大敵) 国家の転覆や家の乗っ取りを企むような大物であり、風格を備えた悪の親玉
八枚目 座頭(座長・一座の総責任者) 一座を代表する重鎮役者であり、劇団全体を統括して最後を締める存在

このように、歌舞伎の芝居小屋では観客が一目見ただけで誰がどの役を演じるのかが分かる仕組みが整っていました。

現代でも使われている二枚目や三枚目は、この整然とした八枚看板の序列から誕生した言葉なのです。

二枚目の語源と歴史的な成り立ち

二枚目という言葉がどのような時代背景の中で生まれ、人々の間に浸透していったのかを歴史的にたどります。

江戸の都市文化の発展と、庶民の最大の娯楽であった歌舞伎の流行が大きく影響していました。

江戸時代の芝居小屋で生まれた看板の序列

江戸時代の芝居小屋は、現在の劇場とは異なり、通りに面した入口の上に華やかな絵看板や文字看板を掲げていました。

当時の興行は年に一度の顔見世興行をはじめとして、役者の顔ぶれや一座の編成が観客にとって最大の関心事でした。

劇場側は誰が出演するのかを強くアピールするため、木戸口の上に大きな役者名看板を並べたわけですね。

文字は遠くからでも見やすいように独特の太い勘亭流という文字で隙間なく力強く書かれていました。

この太い文字には、客席に隙間なく大入り満員になるようにという縁起担ぎの願いも込められていたと伝えられています。

芝居小屋の前に立った観客は、並んだ看板を右から順に眺めながら、役者の顔ぶれや配役を品定めしていました。

その際、右から二番目にある看板を見上げながら、あの役者はいかにも二枚目らしい色男だと噂し合った情景が目に浮かびます。

いつごろから美男子を指す言葉として定着したのか

二枚目が歌舞伎の楽屋や観客の専門用語から、世間一般の言葉へと広がった経緯を時系列で整理してみましょう。

  1. 江戸時代中期に歌舞伎の興行形態が洗練され、芝居小屋の正面に並べる八枚看板の序列が様式として確立する
  2. 江戸時代後期にかけて熱心な芝居通や町人たちの日常会話の中で、色男や優男を指す俗語として二枚目が使われ始める
  3. 明治時代以降に新聞や演劇雑誌などの近代メディアが発達し、劇評や一般記事を通じて全国的な語彙として定着する
  4. 大正から昭和にかけて活動写真や映画の普及に伴い、映画スターを二枚目俳優と呼ぶ表現が定着し現代へと受け継がれる

最初は芝居好きの間だけで通じる通好みの隠語のような響きを持っていた言葉でした。

それが時代を経るにつれて、歌舞伎を直接見ない層の間でも、男前や美男子を意味する一般的な表現として広く使われるようになったのです。

二枚目と関連する役柄の諸説と位置づけ

二枚目の語源を調査すると、文献や解説によって説明の切り口が少し異なる場合があります。

ここでは語源をめぐる説明のニュアンスの違いと、八枚目まで存在した役柄の深い背景を検証していきます。

看板の並び順説と役割番付説の共通点

二枚目のルーツについては、劇場の外に掲げられた大きな木の看板とする解説と、観客に配られた紙の役割番付とする解説が見られます。

一見すると二つの異なる説のように思えるかもしれませんが、実質的には歌舞伎の序列体系に基づく同一の起源といえます。

当時の歌舞伎では、建物の正面に掲げる看板と、印刷して配られた紙の番付の役割順は基本的に一致していました。

どちらの媒体であっても、筆頭の一番右側には座の看板役者が記され、そのすぐ隣の二番目に色男役が配置されていた事実に変わりはありません。

したがって、板の看板か紙の番付かという違いは媒体の差に過ぎず、役柄の序列文化そのものが語源の本体であるといえます。

無理に別々の説として対立させるのではなく、歌舞伎の興行における確固たる序列のルールから派生した言葉と捉えるのが自然でしょう。

一枚目から八枚目までに割り振られた役割の詳細

八枚看板に並んでいた役柄は、単なる人気の順番ではなく、劇を成立させるための絶妙なバランス配分でした。

それぞれの役柄が劇中でどのような役割を果たしていたのか、詳しく見ていきましょう。

  • 一枚目(立役):物語の正義の味方であり主人公。荒事や武士の役などを堂々と演じ、劇場全体の興行成績を背負う大黒柱でした。
  • 二枚目(色男):女性を惹きつける優美な美男子。力強さよりも柔らかさや切なさを漂わせ、男女の情愛を描く場面を担いました。
  • 三枚目(道化役):滑稽な仕草や軽妙な語り口で客席を沸かせる人物。シリアスな展開が続く中で観客の緊張を解きほぐす貴重な役割でした。
  • 四枚目(中軸):劇の展開を安定させる中堅の実力派役者。主役と敵役の間に立ち、物語の筋道を整える重要なポジションです。
  • 五枚目(敵役):悪党側のまとめ役。知恵や権力を振るって主人公を追い詰める、物語の対立構造に欠かせない存在でした。
  • 六枚目(実敵):悪に徹した手下や残忍な敵。主人公に対する容赦ない敵対行動を見せ、観客の怒りやハラハラ感を引き出します。
  • 七枚目(実悪):巨悪を演じる大立者。スケールの大きな悪事を企む存在であり、悪役でありながら舞台上で圧倒的な存在感を放ちました。
  • 八枚目(座頭):一座の統括者でありまとめ役。看板の最後に名前を留めることから留め名とも呼ばれ、舞台全体の品格を支えました。

このように八つの役割が揃って初めて、歌舞伎という壮大なエンターテインメントが成立していました。

それぞれの看板に明確な役割があったからこそ、二枚目や三枚目という言葉に固有の人物像が宿ったのですね。

俗説やよくある誤解との境界線

二枚目という言葉に関しては、時に根拠の薄い俗説が語られることがあります。

例えば、人気投票の順位で二位だったから二枚目と呼ぶようになったという説明を耳にすることがありますが、これは誤りです。

看板の並び順は人気投票の順位ではなく、あくまであらかじめ定まった役柄の配置ルールでした。

また、トランプの絵札のように二番目のカードに美男子が描かれていたからという説も、時代や文化が全く異なる民間語源に過ぎません。

さらに、一枚目より少し劣るから二枚目になったという解釈も、役柄の性質を無視した誤解といえます。

主役と色男は担うべき芸の領域が異なっており、決して優劣の序列で二番手に甘んじていたわけではない点に注意が必要です。

二枚目という言葉の本来の意味と現代での使われ方

歌舞伎の専門用語であった二枚目が、現代社会においてどのように解釈されているかを掘り下げます。

本来の伝統的なニュアンスと、日常的に使われている現代の感覚との間には、興味深い共通点と変化が存在します。

歌舞伎における本来の役柄と人物像

歌舞伎の世界における二枚目は、単に顔立ちが整っているだけの男性を指す言葉ではありませんでした。

立ち居振る舞いが優雅で、言葉遣いが柔らかく、どこか儚げで母性本能をくすぐるような男性像が理想とされていたのです。

自分から力強く女性を口説き落とすというよりも、その美しさと優しさゆえに女性の方から惚れ込まれてしまうような人物設定が多く見られます。

腕っぷしが強く敵をなぎ倒す正義の味方である一枚目とは対照的に、争いごとを好まない柔和な性格として描かれました。

時には色恋沙汰によって身を滅ぼしかけたり、借金を背負って落ちぶれてしまったりする哀愁漂う姿も二枚目の典型的な魅力でした。

表面的な造形の美しさだけでなく、どこか陰りのある情緒的な美しさを体現する役柄だったといえるでしょう。

現代における使われ方とイケメンとのニュアンスの違い

現代では魅力的な男性を表現する言葉としてイケメンが主流となっていますが、二枚目とは醸し出す雰囲気が異なります。

両者の言葉が持つニュアンスの違いを比較してみましょう。

比較項目 二枚目 イケメン
言葉の起源 江戸時代の歌舞伎における役者看板の配置 1990年代後半に雑誌や若者言葉から広まった造語
主な印象 落ち着き、品格、大人の色気、知的な佇まい 爽やかさ、現代的なトレンド感、親しみやすさ
年齢層のイメージ 成熟した成人男性や落ち着いた紳士に似合う表現 10代から30代前後の若い男性に対して使われやすい表現
重視される要素 顔立ちだけでなく立ち居振る舞いや声、物腰の優雅さ 顔のパーツの整い具合や髪型、ファッションセンス

イケメンが視覚的な格好良さやトレンド感を直感的に褒める言葉であるのに対し、二枚目にはどこか品格や色気が漂います。

スーツを端正に着こなす大人の俳優を二枚目俳優と呼ぶように、所作や佇まいに落ち着きがある男性にぴったりの褒め言葉ですね。

二枚目にまつわる面白い雑学と知識

二枚目という言葉から派生した表現や、知っておくと会話が弾む周辺の雑学を集めました。

日本人の言葉のセンスや、東西の文化的な差異が色濃く反映された知識をお届けします。

愛嬌ある美男子を表す二枚目半という表現

日常会話や芸能界で時折耳にする言葉に、二枚目半(にまいめはん)というユニークな表現があります。

これは二枚目と三枚目のちょうど中間に位置するという意味で考案された言葉です。

すなわち、基本的には顔立ちが整った美男子でありながら、三枚目のようにおどけたり笑いを取ったりできる人物を指します。

単なる近寄りがたい完璧な美男子よりも、少し抜けたところやユーモアがある男性の方が親しみやすく魅力的に映ることがありますよね。

気取らずに周囲を笑わせることができる気さくな二枚目に対して、親愛の情を込めて二枚目半と呼ぶ文化が生まれました。

なぜ四枚目以降は日常会話で使われないのか

看板が八枚目まであったのであれば、なぜ四枚目や五枚目は日常会話で使われないのかと不思議に思うかもしれません。

その最大の理由は、一般人の性格やキャラクターを分類する言葉として二枚目と三枚目が圧倒的に便利だったからです。

一枚目は主役そのものを指すため、劇団や組織の代表を一枚看板と呼ぶ慣用句として別の形で定着しました。

一方で、二枚目(かっこいい人)と三枚目(おもしろい人)という対比構造は、人間の個性を語る上で非常に分かりやすい枠組みでした。

それに対して四枚目以降の役柄は、中軸や敵役、実悪といった芝居の筋書きに直結する専門的な役割分担です。

日常生活で身の回りの知人を指して、あの人は四枚目(まとめ役)だとか六枚目(憎まれ役)だなどと分類する必然性が薄かったわけですね。

その結果、個人のキャラクターを端的に言い表せる二枚目と三枚目だけが、庶民の日常語として選抜されて生き残ったと考えられています。

江戸と上方で異なる二枚目のタイプと美意識

歌舞伎における二枚目の人物描写には、東京を中心とする江戸と、京都や大阪を中心とする上方で大きな違いがありました。

東西の美男子に対する美意識の違いは、非常に興味深い文化史的なテーマです。

  • 江戸歌舞伎の二枚目:粋(いき)と張り(意気地)を尊ぶシャープな美男子。『助六由縁江戸桜』の花川戸助六のように、華やかで喧嘩も辞さない気風の良い色男が好まれました。
  • 上方歌舞伎の二枚目:和事(わごと)と呼ばれる柔らかく繊細な優男。『廓文章』の吉田屋伊左衛門のように、お金がなくなって紙の着物を着せられてもどこか品があり、女性に甘えるような風情が愛されました。

男らしさや威勢の良さを求める江戸っ子と、情緒や柔らかい情愛を愛する上方の人々で、理想とする二枚目像が異なっていたのですね。

二枚目という言葉の奥には、各地域が育んできた美男子へのこだわりが豊かに息づいています。

二枚目の由来でよくある誤解

二枚目という言葉の由来を学ぶ上で、混同しやすい代表的な誤解を整理しておきましょう。

もっともらしい俗説に惑わされないための大切な知識です。

まず多いのが、一枚目の補佐役やサブリーダーだから二枚目と呼ぶという誤解です。

一枚目は劇全体の主役であり、二枚目は色恋を担当する主役級の美男子役ですので、主従関係や上下関係ではありません。

それぞれの看板は独立した専門分野を表しており、役割のジャンル分けであって優劣ではない点を覚えておきましょう。

次に、昔の紙幣や絵草紙の二枚目に美男子が印刷されていたからという説も根拠のない誤解です。

江戸時代の印刷物や浮世絵において、二枚目に特定の人物を配置するような決まりは存在しませんでした。

言葉の由来を辿る際は、芝居小屋の看板という劇場の現場から生まれた事実をしっかりと押さえておくことが大切です。

二枚目の由来に関するよくある質問

二枚目の由来や使われ方について、多くの方が疑問に感じるポイントをQ&A形式でまとめました。

二枚目の本来の由来は何ですか?

江戸時代の歌舞伎の芝居小屋で、建物の正面に並べられた八枚の看板のうち、右から二番目に若い美男子や色男役の名前が掲げられていたことが本来の由来です。

一枚目や三枚目にはどんな意味がありますか?

一枚目は芝居の顔となる主役を意味し、三枚目は観客を笑わせる道化役やお笑い担当を意味します。いずれも歌舞伎の看板の配置順序から生まれた言葉です。

なぜ美男子を一枚目ではなく二枚目と呼ぶのですか?

歌舞伎では最も重要な正義の主役が一番目の看板に配置され、男女の恋愛場面を専門に演じる色男役が二番目の看板に配置されるという明確な役柄の決まりがあったためです。

四枚目以降の看板にはどんな役割がありましたか?

四枚目は中堅のまとめ役(中軸)、五枚目は敵役、六枚目は純然たる悪役(実敵)、七枚目は大悪党(実悪)、八枚目は一座を統括する座長(座頭)が割り振られていました。

二枚目半とはどのような意味ですか?

基本的には容姿端麗な美男子(二枚目)でありながら、コミカルでおどけた一面(三枚目)も併せ持つ魅力的な男性を指す言葉です。

女性に対して二枚目という言葉を使うことはありますか?

二枚目は歌舞伎の男性役者(立役)のうち色男役を指して生まれた言葉であるため、伝統的には男性に対して使われます。現代でも女性に対して使われる例はほとんどありません。

二枚目の由来まとめ

何気なく使っている二枚目という言葉には、江戸時代の歌舞伎が育んだ豊かなエンターテインメントの歴史が詰まっていました。

最後に、本記事で解説した重要なポイントを振り返りましょう。

  • 二枚目の由来は、江戸時代の歌舞伎劇場に掲げられた八枚看板の右から二番目に美男子役が並んだこと
  • 一枚目は主役、二枚目は色男、三枚目は道化役というように、それぞれの看板に明確な役柄が割り振られていた
  • 四枚目以降の役柄は劇の専門的な役割だったため、人物の性格分類として使いやすい二枚目と三枚目が日常語として定着した
  • 現代のイケメンが視覚的な格好良さを表すのに対し、二枚目は品格や大人の色気を感じさせる男性にふさわしい表現である
  • 美男子でありながらユーモアを解する魅力的な人物を親しみを込めて二枚目半と呼ぶ文化も生まれた

歌舞伎の舞台構造や看板の歴史を知ると、普段の言葉遣いにも一段と深い味わいが感じられますね。

身の回りに佇まいの素敵な男性がいたら、江戸の粋な文化に思いを馳せながら、二枚目という言葉の背景を話題にしてみてはいかがでしょうか。