「バツイチ」とは、離婚歴が1回あることを指す言葉です。
日常会話でもすっかり定着しているこの言葉ですが、なぜ離婚歴のことを「バツ」と表現するのか、疑問に思ったことはないでしょうか。
結論から言えば、昔の戸籍謄本において、離婚などによって戸籍から抜けた人の名前に「✕」印が引かれていたことが語源です。
この記事では、バツイチの由来や言葉が広まったきっかけ、現在の戸籍の仕組み、さらには関連する雑学まで詳しく解説します。
| 知りたい項目 | バツイチの由来と要点 |
|---|---|
| 語源・由来 | 昔の戸籍謄本で、除籍された人の名前に「✕」印が付けられていたこと。 |
| 普及のきっかけ | 1992年の明石家さんまの離婚会見での発言が最大の契機とされる。 |
| 現在の戸籍 | コンピューター化により「✕」印は廃止され、現在は「除籍」と記載される。 |
| 言葉のニュアンス | 当初は自虐的な響きがあったが、現在は「離婚歴」を示すフラットな言葉に変化。 |
バツイチの由来を先に結論から解説
バツイチという言葉がどこから来たのか、まずはその核心となる由来を簡潔にお伝えします。
語源は私たちの身近な公的書類である「戸籍」の記載方法にありました。
最も有力とされる説は「戸籍謄本の除籍印」
バツイチの由来は、過去の戸籍謄本の記載ルールから来ているというのが最も有力であり、公的な記録に基づく明確な事実として知られています。
かつての戸籍では、結婚や離婚、死亡などによってその戸籍から抜ける(除籍される)際、対象者の名前に大きな「✕(ばつ)」印が書き込まれていました。
離婚をすると、夫婦のどちらか一方が結婚前の戸籍に戻るか、新しい戸籍を作るため、元の戸籍からは抜けることになります。
この時、名前に「✕」が一つ付くことから、「バツが1つ付いた状態=バツイチ」と呼ばれるようになりました。
元々は、役所の戸籍担当者や弁護士などの間で使われていた実務的な業界用語だったと言われています。
バツイチの語源となった戸籍の仕組み
語源となった戸籍の「✕」印ですが、実は離婚した時だけに付けられるものではありませんでした。
戸籍の仕組みを知ると、言葉の背景がより深く理解できます。
なぜ戸籍に「✕」が付けられていたのか
昔の戸籍謄本では、誰が現在の戸籍に在籍していて、誰がすでに抜けたのかを視覚的にわかりやすくするため、アナログな手法として「✕」印を用いていました。
手書きやタイプライターで作成されていた時代の戸籍謄本(縦書きの和紙など)では、除籍された人の名前の上に、赤いペンや黒いインクで大きなバツ印が引かれていたのです。
これは決してペナルティや悪い意味のマークではなく、単なる「事務処理上の取り消し線」でした。
一目でその人が戸籍にいないことが分かるための、極めて合理的な工夫だったと言えます。
離婚だけでなく結婚や死亡でも「✕」は付いた
戸籍から抜けることで「✕」が付くため、実は離婚以外の理由でもバツは付きます。
具体的には、以下のようなケースで戸籍から除籍され、名前に「✕」が付けられていました。
- 親の戸籍に入っている子どもが、結婚して自分たちの新しい戸籍を作る場合
- 養子縁組をして、別の戸籍に移る場合
- 家族が死亡し、戸籍から抜ける場合
- 離婚をして、結婚前の戸籍に戻るか、新しい戸籍を作る場合
つまり、戸籍上の「✕」は「戸籍から出た」という事実を示すだけであり、本来は離婚歴だけを指す特別なマークではありませんでした。
しかし、夫婦の戸籍から一方が抜けるという「離婚」のシチュエーションが、人生において最も話題になりやすかったため、いつしか離婚歴を指す言葉として定着していきました。
実は「戸籍の筆頭者」にはバツ印が付かなかった事実
戸籍の仕組みでもう一つ面白いのが、「離婚した夫婦の両方に✕が付くわけではない」という事実です。
日本の戸籍には、必ずその戸籍の顔となる「筆頭者」が存在します。婚姻届を出す際、夫の氏を名乗るなら夫が、妻の氏を名乗るなら妻が筆頭者になります。
離婚をした場合、戸籍から抜けて名前に「✕」が付くのは、筆頭者ではない側(多くの場合は妻)だけでした。
筆頭者である側(多くの場合は夫)は、配偶者が抜けたあともその戸籍の主としてとどまるため、自身の名前に「✕」は付きません。
そのため、厳密に言えば「離婚をしたからといって、必ずしも自分の名前にバツが付くとは限らない」という状態だったのです。
それにもかかわらず、離婚歴全体を指して「バツイチ」という言葉が広まったのは、戸籍の厳密なルールよりも、言葉のキャッチーさが勝った結果だと言えるでしょう。
バツイチという言葉はいつから広まった?
戸籍の仕組み自体は明治時代から存在していましたが、「バツイチ」という言葉が一般の日常会話で使われるようになったのは、平成に入ってからのことです。
それまではどのように呼ばれていたのか、そしてなぜ急激に広まったのかを解説します。
バツイチ以前の離婚歴はどのように呼ばれていたか
「バツイチ」という言葉が普及する前、離婚をした人やその経歴は、現在よりも重くネガティブな言葉で表現されていました。
代表的な表現には以下のようなものがあります。
- 出戻り(実家に戻ってきたことを指す言葉)
- 離縁(縁が切れたことを強調する言葉)
- 破綻(結婚生活が壊れたことを指す言葉)
- バツイチが普及する直前は、単に「離婚経験者」「離婚歴あり」と事実のみを述べることも多かった
当時は離婚に対する世間の目も厳しく、自ら明るく「離婚しました」と言えるような空気ではありませんでした。
明石家さんまの離婚会見が普及の最大のきっかけ
バツイチという言葉が世間に広く浸透したのは、1992年(平成4年)の出来事がきっかけだと言われています。
タレントの明石家さんまが、女優の大竹しのぶと離婚した際の記者会見でこの言葉を使用しました。
会見の場で、彼が自らの額に指でバツ印を書きながら「バツイチですわ」と明るく笑いを交えて表現したことで、この言葉がマスメディアを通じて全国に知れ渡りました。
明石家さんま自身がこの言葉を考案したわけではなく、前述のように戸籍上の業界用語として存在していたものを彼が知っており、それを会見で使ったという見方が主流です。
いずれにせよ、一般層にこれほどまでにキャッチーな言葉として定着させたのは、間違いなく彼の影響力によるものです。
言葉のニュアンスが劇的に変化した背景
明石家さんまが会見で使ったことにより、「離婚」という出来事が持つ暗くネガティブなイメージが、少し軽く前向きなニュアンスへと変化しました。
それまでの日本では、離婚歴を口にするのは気が引けるものでした。
しかし、自虐を交えつつも笑いに昇華させる「バツイチ」という軽快な言葉の響きは、時代の変化や離婚率の上昇とも相まって、多くの人に受け入れられました。
現在では、単なる「離婚歴が1回あること」を示すフラットな属性用語として、婚活市場や日常会話で抵抗なく使われています。
現在の戸籍謄本にも「✕」は付くのか?
語源となった戸籍の「✕」印ですが、実は現代の戸籍謄本を取得しても、大きなバツ印を見ることはほとんどありません。
制度の変更について詳しく見ていきましょう。
戸籍のコンピューター化で「✕」は廃止された
1994年(平成6年)に戸籍法が改正され、戸籍の電算化(コンピューター化)が全国の自治体で順次進められました。
この電算化に伴い、和紙に手書きやタイプライターで記録し、名前に「✕」印を付けるという物理的な記帳方法は廃止されました。
現在発行される戸籍謄本(正しくは「戸籍全部事項証明書」と呼びます)は、A4サイズの横書きでプリントアウトされたフォーマットになっており、かつてのような縦書きにバツを引くレイアウトは採用されていません。
現在は「除籍」という文字で記録される
現在のコンピューター化された戸籍では、「✕」印の代わりに、氏名の欄に「除籍」という文字が記載されるようになっています。
また、戸籍の身分事項欄には「【除籍に関する事項】」として、いつ、どのような理由(離婚、婚姻、死亡など)で戸籍から抜けたのかが文章で記録されています。
つまり、現在のシステムで離婚をしたとしても、名前に物理的な「✕」が付くことはありません。
過去の「✕」印は「平成改製原戸籍」で確認できる
「では、もう一生バツ印を見ることはできないのか」というと、そうではありません。
電算化される前の「平成改製原戸籍(へいせいかいせいげんこせき)」と呼ばれる古いタイプの戸籍謄本を取得した場合には、当時記録された「✕」印を現在でも見ることができます。
相続の手続きや家系図の作成などで古い戸籍を取り寄せた際に、初めて実物の「バツ印」を見て驚く人も少なくありません。
バツイチにまつわる関連語と雑学
バツイチという言葉から派生して、現在では様々な言葉が生まれています。
また、海外の表現との違いなど、知っておくと面白い雑学を紹介します。
バツニやバツサンなどの派生語
離婚歴の回数に応じて、バツイチから派生した言葉も使われています。
- バツニ:離婚歴が2回あること
- バツサン:離婚歴が3回あること
戸籍上の除籍を繰り返せば、理屈の上では新しい戸籍を作っては抜けることになり、その都度記録が残ります。
言葉の作りとして数字を増やしていくだけで意味が通じるため、「バツニ」「バツサン」といった表現も自然に定着しました。
前向きな意味を込めた「マルイチ」という表現
近年、バツイチという言葉の「バツ(✕)」が持つ否定的な響きを嫌い、あえて「マルイチ(◯一)」と呼ぼうとする動きも一部で見られます。
これは「離婚という経験を積んで学んだ」「結婚生活を一度は経験できたマル(肯定)である」といった前向きな意味を込めた造語です。
婚活業界などでは、離婚歴のある人を魅力的なパートナー候補としてポジティブに捉えるためのリフレーミング(言い換え)として提案されることがあります。
一般社会ではまだ「バツイチ」ほど広くは浸透していませんが、時代の価値観の変化を象徴する言葉だと言えるでしょう。
英語でバツイチはどう表現する?
日本の戸籍制度から生まれた「バツイチ」には、そのまま直訳できる英単語はありません。
英語で離婚歴を伝える場合は、事実をそのままストレートに表現します。
例えば、「I am divorced.(私は離婚しています)」や「I have been divorced once.(一度離婚したことがあります)」といった言い回しが一般的です。
日本のように「✕がつく」というような独特の表現や比喩は用いられず、よりシンプルに婚姻ステータスを伝える文化となっています。
婚活市場におけるバツイチの捉え方の変化
バツイチという言葉が普及した1990年代以降、婚活や恋愛市場における離婚歴の捉え方も大きく変わりました。
かつては初婚であることが重視される傾向が強かったものの、現在では「結婚の現実を知っている」「相手に対する過度な理想を押し付けない」といった理由から、バツイチであることを前向きに評価する人も増えています。
言葉の響きがカジュアルになったことが、こうした社会的な意識の変化を後押しした側面もあるでしょう。
バツイチの由来に関するよくある誤解
バツイチの語源については広く知られていますが、細かな部分でいくつかの誤解も見受けられます。
代表的な誤解を以下の表に整理しました。
| よくある誤解 | 正しい事実 |
|---|---|
| 離婚した人にだけ✕が付く | 結婚、養子縁組、死亡による除籍でも✕は付きます。離婚限定のマークではありません。 |
| 悪いことをしたペナルティである | 罰や失敗の烙印ではなく、単なる事務処理上の「取り消し線」です。 |
| 夫婦両方の名前に✕が付く | 戸籍から抜けた側(非筆頭者)にだけ✕が付き、戸籍に残る筆頭者には付きません。 |
| 現在の戸籍にも✕が付く | 現在の戸籍全部事項証明書には✕印は印字されず、「除籍」と記載されます。 |
バツイチの由来に関するよくある質問
バツイチの由来や語源について、よく検索される疑問をQ&A形式でまとめました。
バツイチの由来は何ですか?
昔の戸籍謄本で、離婚などにより戸籍から抜けた(除籍された)人の名前に「✕(ばつ)」印が付けられていたことが由来です。
バツイチという言葉はいつから使われていますか?
1992年(平成4年)に、タレントの明石家さんまが自身の離婚会見で「バツイチです」と発言したことがきっかけで、日本全国に広く定着したと言われています。
今の戸籍謄本にもバツ印は付きますか?
現在の戸籍(戸籍全部事項証明書)には「✕」印は付きません。戸籍の電算化(コンピューター化)に伴い、「✕」の記号の代わりに「除籍」という文字が記載されるようになりました。
結婚して戸籍を抜けても「バツ」は付きますか?
はい、昔の形式の戸籍(平成改製原戸籍など)であれば、結婚して親の戸籍から抜けた場合でも、除籍の印として名前に「✕」が付きます。本来は離婚歴だけを示すマークではありませんでした。
バツニやバツサンという言葉もありますか?
はい、離婚を2回経験した人を「バツニ」、3回経験した人を「バツサン」と呼ぶ派生語も一般的に使われています。
バツイチの由来まとめ
バツイチの由来は、昔の戸籍謄本で除籍された人の名前に引かれた「✕(ばつ)」印でした。
本来は結婚や死亡などでも付けられる事務的な印でしたが、明石家さんまの離婚会見をきっかけに、「離婚歴が1回あること」を示す言葉として広く世間に定着しました。
現在では戸籍の電算化によって実物の「✕」印を見る機会はほぼなくなりましたが、言葉だけは日常の語彙として深く根付いています。
かつてはネガティブに語られがちだった離婚歴を、少し明るくフラットなニュアンスに変えたという意味で、この言葉が果たした役割は小さくないと言えるでしょう。